前回の記事では、基礎練習がなぜ必要なのか、そしてトロンボーンの基礎練習では「良い音」が最も大事ということを書きました。

今回は、引き続き基礎練習について、トロンボーンの具体的な基礎練習は何があるか、オススメの教則本は何かを紹介していきたいと思います。
僕自身も勉強になるので、ご意見や、ご感想などは是非コメントにお願いします!
トロンボーンを演奏するために必要なテクニックは何個ある?
僕は、よくレッスンで「トロンボーンを演奏するのに必要なテクニックは何個あるでしょう?」というクイズを出しています。皆さんは何個だと思いますか?
もちろん様々な意見があると思いますが、僕の意見では、トロンボーンを演奏するために必要なテクニックは大きく分けて4つ、もしくは5つしかありません。
- ロングトーン(音を伸ばす)
- タンギング(音の長さを決める、音の立ち上がりのキャラクターを作る、など)
- リップスラー(同じポジションのまま音の高さを変える)
- スライディング(スライドを動かすこと)
- バルブ操作(F管などのアタッチメントを操作する)(*アタッチメントがついていない楽器の場合は、必要ない。)
もちろん、細かく数えればテクニックはまだまだ数えきれないほどありますが、ほとんどの場合は上記のいずれか、もしくはそれぞれの組み合わせによって演奏をしているのではないでしょうか。つまり、これらをしっかりトレーニングすることがトロンボーンの基礎練習のポイントになっています。
トロンボーンの基礎練習は4種類!
ここまで、トロンボーンを演奏するための技術が4つ、もしくは5つであることであることを解説しました。それでは、これらの技術を効率よくトレーニングするためにはどのような基礎練習が良いのでしょうか?
実は、トロンボーンの基礎練習は大きく分けて4種類であり、それらを組み合わせて基礎練習を行っていきます。
- ロングトーン練習
- タンギング練習
- リップスラー練習
- スケール/アルペジオ/インターバル練習(テクニックを複合的に使う練習)
スケール/アルペジオ/インターバル練習に関しては、それぞれ別のものと考えることもできるかもしれませんが、ロングトーン、タンギング、リップスラーを複合的に使っているということで1つにまとめて考えています。
これからトロンボーンの演奏を学ぼうと思っている人は、基礎練習と聞くとゴールの見えない長い道のりに思えるかもしれませんが、改めてみてみるとそこまで大変なものではないことが分かります。これらの見通しをつけて体系的に自分に合った練習を行えば、効率的に上達できるのではないでしょうか。
そして、多くのトロンボーンのための教則本は、これらの練習方法をまとめたものになっています。
トロンボーンの基礎練習4種類の目的と方法
考えられる限りで、それぞれの練習の目的と方法をまとめてみました。(ぜひこうした方が良い、これもあった方が良いのでは?などのご意見があれば、コメントをいただけると嬉しいです。)
| 練習の種類 | 目的 | 方法 |
|---|---|---|
| ロングトーン練習 | ・音色を作る。 ・息を安定させる。 ・強弱の変化にともなう息のスピード感を覚える。 ・音域が変化しても音色が安定するようにする。 など。 | ・さまざまな音を伸ばす。 ・クレッシェンド、デクレッシェンドをつけて音を伸ばす。 など。 |
| タンギング練習 | ・さまざまな音の立ち上がりを練習する。(ノーマル、スタッカート、アクセント、レガート等) ・シングルタンギング、ダブルタンギング、トリプルタンギングの練習をする。 など。 | ・さまざまなパターンのリズムやニュアンスをタンギングで演奏する。 など。 |
| リップスラー練習 | ・同じポジションで音の高さを自由に変えられるようにする。 ・音の高さごとの、適切な息の出し方やアンブシュアを覚える。 ・音程の変化を伴う早い動きに対応できるようになる。 ・トリルを演奏できるようになる。 ・音域を広げる。 ・高い音と低い音の移動をスムーズにする。 ・音域が変化しても音色が安定するようにする。 など。 | ・ゆっくりなリップスラーと、早いリップスラーのパターンの両方からアプローチする。 ・倍音を跨ぐスケールをリップスラーで練習する。 ・レガートを多用した旋律を、リップスラーを用いて練習する。 など。 |
| スケール/アルペジオ/インターバル練習 (基礎練習の複合練習) | ・上記の3つの基礎練習を組み合わせて演奏できるようになる。 ・音域が変化しても音色が安定するようにする。 ・ポジションを覚える。 ・音程感覚を養う。 ・タンギングとリップスラーを組み合わせて演奏できるようにする。 ・スライドの動きを練習する。 ・アタッチメントを使ったポジションを覚える。 ・アタッチメント操作の練習。 など。 | ・スケール/アルペジオ/インターバルのパターンを様々なアーティキュレーションや強弱をつけて練習する。 など |
どうしたら効率的に基礎練習ができるか?
ここまで、トロンボーンに必要な基礎練習4種類を詳しくみてきましたが、具体的に、どうすれば効率的な練習ができるのか困っている方も多いと思います。
そんな方に、僕はトロンボーンのための教則本を使って練習パターンを覚えることをオススメします。
ここでは、数ある教則本の中でも、初心者の方と、中・上級者の方にそれぞれベストな教則本をご紹介します。
初心者にオススメの教則本
まず、楽器を始めたばかりの初心者の方にオススメなのは「JBC バンドスタディ パートブック トロンボーン」です。
実は、僕が初めて使った教則本は、中学校の吹奏楽部にあったこのJBCバンドスタディでした。今回解説した基礎練習がほとんど網羅されているほか、写真付きの楽器の構え方解説や、用語集が掲載されており、この1冊があればとりあえず全て分かるという優れものです。また、パートで一緒に練習するためのコラールが入っている点もGOODポイント。そして、バンド全体で共通する練習番号を利用すれば基礎合奏にも使えます。もちろん、大人の方や、バンドのレベルアップを図りたい指導者の方にもオススメです。
弱点をあえて挙げるとすれば、初心者向けに全振りしているので、少し上達すると飽きてきてしまうことです。また、内容はバンド全体で共通して使えることに主眼が置かれているため、トロンボーンに特化したものが欲しい方には少し物足りないかもしれません。
中・上級者にオススメの教則本
もう少し専門的に勉強したいという中・上級者の方にオススメなのは通称「レミントン」と呼ばれるウォームアップ教本です。
この本は世界中で昔から愛用されている定番中の定番です。僕は、音大受験のためのレッスンに通い出したとき、先生から教わって購入しました。現在は、自分がレッスンする際になくてはならない存在で、ボロボロになりながらも10年以上使い続けています。
レミントンというのは、アメリカで活躍したトロンボーン奏者であり、数多くの名演奏家を育てた名教師です。彼の教えをまとめたこの教則本には、今回の記事で解説した基礎練習を最も効率的にトロンボーンに適した形で練習するための楽譜が豊富に掲載されています。解説は英語ですが、ぜひ頑張って読んで欲しい内容がたくさん書かれています。全てのトロンボーン愛好家の方に1冊は必ず持っていていただきたい名著です。
敢えてこの「レミントン」の弱点を挙げるとすれば、基礎練習に全振りしているため、音楽的な旋律はほとんど掲載されていないことです。しかし、いずれの単純なパターンも音楽的に演奏することを意識して取り組むことで、逆に音楽的な能力が向上するとも捉えられます。
ステップアップにはレッスンとエチュード集を。
ここまでトロンボーンの基礎練習と、オススメの教則本をご紹介しました。
ただ、まだここは奥深いトロンボーンの世界の入り口に過ぎません。
ぜひ、ご自身の演奏のどこが足りないのか、そしてどうすれば次のステップへ向かえるのか、専門家からのアドバイスを受けてみませんか?レッスンを受けることで、自分に合った基礎練習のメニューや、適切なやり方を習い、上達を早めることができます。僕自身、各種レッスンを行っていますので、お気軽にコンタクトページよりお問い合わせください。
そして、教則本から更に1歩レベルアップしたいという方には練習曲=エチュード集を購入されることをオススメします。次回はオススメのエチュードをレベルや目的別にご紹介したいと思います。お楽しみに!


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